本
桐野夏生『女神記』読みました。あらすじヤマトの遙か南の海に浮かぶ海蛇の島で夜の巫女として生まれたナミマ。そこでは人も場所もすべてが陽と陰、昼と夜の二項対立で分けられている。ナミマは自分の夜の巫女としての運命を逃れようとして愛するマヒトと島…
桐野夏生『グロテスク』読みました。あいかわらずものすごい吸引力!ダイソン掃除機も目じゃないです。 主人公の「わたし」は日本人の母とスイス人の父のあいだに生まれたハーフで、ユリコという美しい妹がいる。「わたし」は名門として名高いQ女子高に入学…
桐野夏生『残虐記』読みました。いや〜あいかわらず読ませます。どんどん先を読みたくなる。そして読んでいると脳内物質が分泌される。我を忘れ、文体のことなどもすっかり忘れて物語にどっぷり入れ込んでしまう。おそろしや。!!!以下、ネタばれ注意!!…
町田康の小説『宿屋めぐり』読みました。面白かった!この作家の小説を決定的に特徴づける「音響効果」のユニークさ、それに、無意味なようでなぜか分かってしまうしかし説明しろと言われても無理な言葉づかいの絶妙さは、本作でも健在です。!!!以下、ネ…
桐野夏生『柔らかな頬』読みました。すごい!『OUT』もよかったけど、こっちの方がぶっとんでる!北海道の家族の元を飛び出し東京へ出てきたカスミ。やがて製版会社で働きだした彼女は社長の森脇と結婚するが、会社の客である広告代理店の石山と浮気をする。…
桐野夏生『アンボス・ムンドス』読みました。短編集。スティーブン・キングばりのホラーあるいはサイコ・サスペンス。憎しみ、裏切り、幻滅などの負の感情に焦点を当てた物語たち。辛い現実を想像で乗り越えようとする人間が現実に裏切られるショック。『毒…
桐野夏生『OUT』読みました。すごく面白かった。一気に読んだ。あらすじ !!!完全ネタばれ注意!!! 荒涼とした東京の郊外にある弁当工場。そこで働く雅子、ヨシエ、邦子、弥生。それぞれに重い家庭の事情を抱えている彼女たちが、弥生が衝動的に殺した夫…
後藤明生の小説『挟み撃ち』読みました。小説家であるらしい「わたし」は、ある日とつぜん早起きをして、遠い昔にいつのまにか行方不明となってしまった外套を探し求める。九州筑前の田舎町から出てきて受験に失敗し、浪人をしながら初めて下宿をした蕨。蕨…
『中国低層訪談録』という本がすごいらしいので、書評から孫引きします。http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/bookreview/42/index.html この本は、詩人である著者の廖亦武が中国の「どん底の世界」に入り込み、インタビューをした内容をまとめたもの。日本で「…
『シネマの記憶喪失』読みました。『文學界』に2005年から2006年にかけて連載された、阿部和重と中原昌也による対談形式の映画批評です。 なんだかね……。こういう映画批評って、いったい誰のためにやってるんだろう?と思った。 中原昌也は「シネフ…
阿部和重『無情の世界』読みました。三つの小説からなる作品集です。トライアングルズ他人の幸せのことばかりを考えてばかりいるが同時に、どうしようもなく一人よがりでパラノイアックな「先生」。青春学園ドラマの熱血教師のような意欲の空回り。「私」の…
阿部和重『ABC戦争』読みました。読んだのは二話追加の新潮文庫の方。冒頭で「わたし」は山形新幹線の中にいる。列車による移動、東北、戦争、ということから『吉里吉里人』のような小説を予期していると、話題はいきなりトイレの中の落書きのことになり、そ…
『阿部和重対談集』読みました。いま一番自分が読んで面白いものを読んだという気がする。我が意を得た部分もあれば、目から鱗が落ちたという部分もあった。まあとにかく、阿部和重の小説はすべて読もうという気になりました。 ここで一つ、阿部和重について…
旧タイトル「市の聖!空也?」も気には入ってたんですけどね。ええとご存じかもしれませんが空也というのは平安中期に活躍した僧で、口から6体の阿弥陀仏を吐き出しているあの衝撃的な像で有名な人。 当時京都に流行した悪疫退散のため、上人自ら十一面観音…
阿部和重『ミステリアスセッティング』読みました。これほど感情をかき回された小説はひさしぶり。「引き込まれる」って表現が生っちょろく感じるほど。はやく話の先を知りたくて、ページをめくる手に目が追いつかないほどだった。そんなに速くは読めないよ…
阿部和重『プラスティック・ソウル』読みました。最初、どこかアメリカの臭いがした。アシダ、イダ、ウエダ、エツダという記号のような名前にはポール・オースターの『幽霊たち』を連想したし、ところどころ村上春樹風の部分さえあると思った。でも読み進め…
五味文彦著『梁塵秘抄のうたと絵』 (文春新書)のつづきです。今様は王や貴族に独占されていたものではなかった。それは庶民の生活にも密着したものだった。今様はもともと「遊女や京童らによって謡われ流行したものであって民間に流布していた歌謡である」。…
五味文彦著『梁塵秘抄のうたと絵』 (文春新書)のつづきです。 仏は常にいませども 現ならぬぞあはれなる 人の音せぬ暁に ほのかに夢に見え給ふ これは『梁塵秘抄』を代表する歌の一つ。映画『桜の森の満開の下』の中で、山賊に切り取らせた人間の首(それも…
五味文彦著『梁塵秘抄のうたと絵』 (文春新書)読みました。 中世は「歌の時代」といっていいほどに、歌が人を動かした時代であった。和歌があり、連歌があり、今様があり、朗詠があり、和讃あり、読経あり、声明あり、念仏あり。早歌があり、宴曲があり、謡…
自分の心身にぴったりと合った職を持たず、創造的な人間でありたいと願いながらもどこか自分を紋切り型ではないかと恐れている、そんな人物が阿部和重の小説にはよく出てくる。私のようなブロガーもまさにそんな一人なのだが。そんな自分に自信のない人間に…
道の上で干からびかけて瀕死のミミズたちに哀愁を感じるこの季節、みなさまはいかがおすごしでしょうか。さて、『グランド・フィナーレ』にひきつづき、阿部和重『ニッポニアニッポン』読みました。今回はちょっと趣向を変えて、29日の朝日新聞に載った斉藤…
窓をあけっぱなしにして寝たら朝の四時すぎに鳥たちの暴力的なさえずりで目を覚まされてしまう今日このごろ、みなさまはいかがおすごしでしょうか。さいきん書道にハマっている。『すらすら筆ペン練習帳』をひととおりやってから、石川九楊先生の『書道入門…
[阿部和重の『グランド・フィナーレ』読みました。すごくうまい。阿部和重は人に勧められて最初に読んだ『インディヴィジュアル・プロジェクション』がピンとこなくて内心あなどっていたんだけど、『シンセミア』で大いに反省した。今回の本は芥川賞受賞作。…
グレゴリー・ベイトソン『精神の生態学』より。 P夫妻は結婚して十八年ほどになるが、十六歳の息子は破瓜病の傾向があった。結婚生活は平穏とは言い難く、常に互いの敵意がむき出しになる状態である。しかし妻は庭いじりが大好きで、ある日曜の昼下がり、夫…