2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

アメリカ風堕落 〜マグノリア〜

ポ−ル・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』みました。最初の三分の一はよかった。どんどんと緊張が高まっていくのに比例して、クライマックスへの期待も高まっていく。ところがそのクライマックスはなんだか散発的にやってきて、もうすぐ映画の終わ…

夫の価値が分からない妻 〜ヒストリー・オブ・バイオレンス〜

デイヴィッド・クローネンバーグ『ヒストリー・オブ・バイオレンス』みました。クローネンバーグ監督というから『ヴィデオドローム』や『裸のランチ』や『クラッシュ』や『イグジステンツ』のような、主人公が迷路のような悪夢に迷い込んでいって、変な形の…

現実ってホントにみにくくてつらくてイヤだわ 〜アンボス・ムンドス〜

桐野夏生『アンボス・ムンドス』読みました。短編集。スティーブン・キングばりのホラーあるいはサイコ・サスペンス。憎しみ、裏切り、幻滅などの負の感情に焦点を当てた物語たち。辛い現実を想像で乗り越えようとする人間が現実に裏切られるショック。『毒…

石油にまみれたゴッド・ファーザー 〜ゼア・ウィル・ビー・ブラッド〜

ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』をみました。19世紀の終わり、金を求めてたった一人で深い穴の底でつるはしをふるい、硬い岩を掘り進む男の映像から映画は始まる。その穴からはやがて石油が出て、櫓が組まれる。石…

クローバーフィールド

『クローバーフィールド』みました。得体の知れない敵が突然攻撃をしかけてきて、自分たちの住む町が破壊され、仲間たちが死んでいく。軍隊もこの未知の敵にはまったく歯が立たない。こちらは一方的に殺されるばかりで、主人公たちはただただ逃げまどう……そ…

女性の欲望の大きさに圧倒されるの巻 〜桐野夏生『OUT』〜

桐野夏生『OUT』読みました。すごく面白かった。一気に読んだ。あらすじ !!!完全ネタばれ注意!!! 荒涼とした東京の郊外にある弁当工場。そこで働く雅子、ヨシエ、邦子、弥生。それぞれに重い家庭の事情を抱えている彼女たちが、弥生が衝動的に殺した夫…

軍歌からゴーゴリへ 〜挟み撃ち〜

後藤明生の小説『挟み撃ち』読みました。小説家であるらしい「わたし」は、ある日とつぜん早起きをして、遠い昔にいつのまにか行方不明となってしまった外套を探し求める。九州筑前の田舎町から出てきて受験に失敗し、浪人をしながら初めて下宿をした蕨。蕨…

血の池地獄 〜宇宙戦争〜

スピルバーグの『宇宙戦争』みました。とてもよかった。期待してなかっただけ余計によかった。スピルバーグのSFだっていうから『E.T.』みたいな、あるいは『A.I.』みたいなファンタジックなSFを予想してたら、とんでもなかったです。いや、さすがに『E.T.』…

新しさと保守 〜ノーカントリー〜

2007年、コーエン兄弟監督・製作の『ノーカントリー』を観ました。!!!ネタばれ注意!!!麻薬の取引がこじれたあとの現場にたまたま通りかかり、そこから大金の入ったバッグを持ち帰ったモスは、止めときゃあいいのに死にかけている男に水を飲ませてやる…

いなか、の、じけん(中国編) 〜中国低層訪談録〜

『中国低層訪談録』という本がすごいらしいので、書評から孫引きします。http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/bookreview/42/index.html この本は、詩人である著者の廖亦武が中国の「どん底の世界」に入り込み、インタビューをした内容をまとめたもの。日本で「…

対談形式と政治 〜シネマの記憶喪失〜

『シネマの記憶喪失』読みました。『文學界』に2005年から2006年にかけて連載された、阿部和重と中原昌也による対談形式の映画批評です。 なんだかね……。こういう映画批評って、いったい誰のためにやってるんだろう?と思った。 中原昌也は「シネフ…

ドニー・ダーコ 二回目

『ドニー・ダーコ』を再びみました。今度は英語の字幕で。やっぱりよかった。私の好きなシーン、その1:周りにいる人の胸から『ターミネーター2』の水銀男のようなものがひょろひょろ伸びていくのが突然見えてくてしまうシーン。自分の胸からもその液体の…

死相ただよう恋人たち 〜ドニー・ダーコ〜

『ドニー・ダーコ』みました。2001年、リチャード・ケリー監督。本編を観たあと特典映像の中の予告編を見ると、パラレル世界、時間の反転などということが宣伝文句になっていて、そういえばこの映画はSFでもあるのだと思い至った。でも私にとってはSFの部分…