2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

ある近代の黎明 〜黄色い大地〜

陳凱歌(チェン・カイコー)監督『黄色い大地』(1984年)みました。スゴイ。圧倒されました。まさにいま消え去りつつある瞬間の古い農村社会、残酷でありまた美しくもある小世界を描いた、完璧な映画だと思います。あらすじ1939年の初春、陝西省北部の農村…

複数の視点、そして美人という怪物 〜グロテスク〜

桐野夏生『グロテスク』読みました。あいかわらずものすごい吸引力!ダイソン掃除機も目じゃないです。 主人公の「わたし」は日本人の母とスイス人の父のあいだに生まれたハーフで、ユリコという美しい妹がいる。「わたし」は名門として名高いQ女子高に入学…

貧しさの中で悪が不条理にも勝利する映画 〜忘れられた人々〜

1950年公開の映画、ブニュエルの『忘れられた人々』みました。メキシコのスラムで生きる人々を描いた、いわゆる「リアリズム」映画。主人公のペドロはスラムに住む子供で、学校にも仕事にも行かずに近所の悪ガキたちとつき合っている。そこに感化院を脱走し…

終わりよければすべてよし 〜キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン〜

スピルバーグ監督の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』みました。実際にあった驚くべき詐欺事件を元にした映画。レオナルド・ディカプリオ演じるフランク・W・アバグネイルJrの父(クリストファー・ウォーケン)は山っ気のある男で、文房具店を営んで…

被害者づらする暗殺者 〜ミュンヘン〜

スピルバーグ監督『ミュンヘン』みました。!!!ネタばれ注意!!!ミュンヘン・オリンピックのイスラエル選手11人をパレスチナ武装組織「黒い九月」が殺したテロ事件を元にした映画。イスラエル政府はメイア首相の命令下でアヴナーをリーダーとする暗殺…

あと一歩でホラーから逸脱しそうなホラー映画 〜LOFT〜

黒沢清監督の『LOFT』みました。こちらで予期する展開や映画表現の手法を不意に逸脱する部分がいくつかあって、それが面白かった。例えば、 中谷美紀と豊川悦司が二人で土を掘り返して、結局何も出なかったあとの不自然な流れ。いきなり抱き合って、わざ…

妄想を核にして真相が見えてくる 〜残虐記〜

桐野夏生『残虐記』読みました。いや〜あいかわらず読ませます。どんどん先を読みたくなる。そして読んでいると脳内物質が分泌される。我を忘れ、文体のことなどもすっかり忘れて物語にどっぷり入れ込んでしまう。おそろしや。!!!以下、ネタばれ注意!!…

正座して観賞するSFアクション 〜イーオン・フラックス〜

シャーリーズ・セロン主演『イーオン・フラックス』みました。シャーリーズ・セロン、相変わらずがんばってます。この映画で彼女が演じる役はたしかにセクシーな女戦士なんですが、どこか、みているこちらが思わず居住まいを正してしまうようなセクシーさ&…