2010-01-01から1年間の記事一覧

家族という部族 〜心臓を貫かれて〜

マイケル・ギルモア著、村上春樹訳『心臓を貫かれて』を読みました。アメリカのある異常な、しかし同時に象徴的でもある家族を描いた驚くべきノンフィクションです。二人の人間を殺して死刑になったゲイリー・ギルモアという人物がいる。その歳の離れた弟で…

低層社会のスポークスマン 〜廖亦武へのインタビュー〜

以下はル・モンドによる廖亦武へのインタビューの翻訳です。廖亦武は中国の反体制作家で、現在日本で唯一出版されている彼の著書『中国低層訪談録』はこのブログでも紹介しました。蛇足ながら、ここにこれを訳出するのは中国を貶めるためでは決してありませ…

発信力よりも消化力 〜日本語が亡びるとき〜

水村美苗『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』を読んだ。むちゃくちゃ刺激を受けた。本書が重要な本であることは間違いがないと私は思う。日本語や小説に興味のある人だけではなく、言葉を使うことを生業にする人、現代日本において日本語かあるいは西洋…

女性にとっての初恋というもの 〜パーマネント野ばら〜

シネセゾン渋谷で『パーマネント野ばら』を観てきた。すばらしい名作だと思う。原作は西原理恵子、監督は吉田大八。泣いた。電車の中で映画のシーンを思い出し、また泣いた。 ★以下、ネタばれ注意です。この映画を観ようと思っている方は、まず映画を観てく…

開かれた日本とその未来 〜銃・病原菌・鉄〜

ジャレド・ダイアモンド著『銃・病原菌・鉄』〈上・下〉を読みました。実に興味深く盛りだくさんな本です。冒頭で著者は一つの問題を提起する。地球上のある地域の人びと(例えばニューギニアの)が他の場所から来た人びと(例えばヨーロッパからの)に植民…

日本の政治状況をめぐる仮説w

日本ではせっかく政権交代したというのに、どうしてこうも政治がぱっとしないのでしょうねえ。かのアメリカでは、オバマ大統領が大喧嘩をした末に医療改革法案を通し、核安保サミットを開催し、のびのびと自分の政治をしているというのに。日本の政治家はど…

経済成長戦略メモw

いまさらまた経済成長ですか?六〇年代の高度経済成長期にもうずいぶんとやったんじゃないんですか?またやれって?やる気わかんな〜。同じぐらい「高度な」成長は望み薄なのに?それもその理由というのが「今あるものを守るため」ってゆう、なんつうか、後…

良識の人 〜なにも願わない手を合わせる〜

藤原新也著『なにも願わない手を合わせる』読みました。この著者はホント良識の人です。その偏りも含めて全部そのまま受け入れてしまいそうになる。文章は実に文学的で心地よい。あまりにも文学的なのがかえって玉に瑕なほど。ただ、「今昔の母親の子供の育…

芸能者は今も昔も河原者 〜河原者ノススメ〜

篠田正浩著『河原者ノススメ』読みました。興奮しつつ読みました。今まで興味を持ちつつもいい加減にしか把握してなかった日本の芸能にまつわるいろいろなトピックが、この本によって互いに結びつき合わされたような気がしました。この本では中世から近世に…

自分の居場所はない世界 〜崖の上のポニョ〜

テレビでやってたので『崖の上のポニョ』を観ました。どうもいけてない。そのいけてない感がどこからくるかというと、物語の舞台と物語のあいだで現実感のレベルのギャップがあまりにも大きいからではないか、という結論に達する。登場人物は子供も大人も含…

宗教は割に合わない 〜仮想儀礼〜

篠田節子『仮想儀礼(上・下)』読みました。 ものすごく面白かった。一気に読んだ。都庁の役人でゲームのシナリオ書きを内緒の副業にしていた鈴木正彦が、編集者の矢口と二人で聖泉真法会という新興宗教を興す話。 教祖の桐生慧海こと鈴木正彦がたてた教義…

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少女にとっての生きにくさ 〜渋谷〜

藤原新也『渋谷』小説としてすごくよかった。この人の現実を型にはめる力、美化する力はすごいと思う。べつに非難ではない。人の手によって美化され、整形された「現実」に人は勇気を与えられる。それが芸というものだ。写真もまた人の手によって美化され、…