自分の居場所はない世界 〜崖の上のポニョ〜

テレビでやってたので『崖の上のポニョ』を観ました。

どうもいけてない。そのいけてない感がどこからくるかというと、物語の舞台と物語のあいだで現実感のレベルのギャップがあまりにも大きいからではないか、という結論に達する。

登場人物は子供も大人も含めて子供みたいで、船長さえ子供が船長ごっこをしているようにしか見えない。しかしそんなことなら『ルパン』だってそうだけど、ルパンがOKなのはつまり舞台が物語と同じ程度に非現実的だからだ。しかも欲望に裏打ちされた感情の動きはリアル(少なくとも昔のルパンは)。

ポニョは町のつくりとか職業などの設定はリアルなくせに、そのリアルさが論理的に要請するはずのもの(「真の」労働とか競争とか死とか金とか)が徹底的に捨象されている。

そのために、どこかの新興宗教のパンフの表紙にあった「鹿のとなりにライオンが寝そべる」式の世界に対するのと同じたぐいの胡散臭さを感じてしまうのだ。

あと、好意的に描いているようでいて浅く戯画化され、結局のところ馬鹿にしているようにしか思われない老人たちとか、宝石じゃらじゃらの女神風女性とか、私の親の世代が喜びそうな西欧趣味とかが端的に鼻につく。