宗教は割に合わない 〜仮想儀礼〜

篠田節子『仮想儀礼(上・下)』読みました。
ものすごく面白かった。一気に読んだ。

都庁の役人でゲームのシナリオ書きを内緒の副業にしていた鈴木正彦が、編集者の矢口と二人で聖泉真法会という新興宗教を興す話。
教祖の桐生慧海こと鈴木正彦がたてた教義は穏当なものだった。彼はなにより人に安心や癒しを与え、その見返りとして報酬を得ることを目標とする。出家主義をとらず、親など身近な人間との和解を勧め、他の宗教も一切否定しないという、ある意味で理想的な宗教。

富裕層に食い入ってそこそこ成長した聖泉真法会をさまざまな危険が襲う。まず、金の匂いにひかれて乗っ取りを狙うやつらが現れる。それから世間の新興宗教に対する偏見とそれを煽るマスコミの攻撃に晒される。そして、最後まで残って先鋭化した信者たちが勝手に教義を捻じ曲げて暴走を始める。

それらの事態に、法学部卒で元都庁職員で根っからの常識人である桐生慧海こと鈴木正彦がどのように対応していくか、そこがめっぽう面白く、読ませて飽きない。