終わりよければすべてよし 〜キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン〜

スピルバーグ監督の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』みました。実際にあった驚くべき詐欺事件を元にした映画。

レオナルド・ディカプリオ演じるフランク・W・アバグネイルJrの父(クリストファー・ウォーケン)は山っ気のある男で、文房具店を営んでいたが脱税で訴えられている。誕生日にフランクは父から銀行の小切手帳をプレゼントされ、自分の名前が印刷された小切手にうっとりとする。
フランクの母はフランス人で、父とは戦争中にフランスで出会った。多くのライバルを出し抜いて母をしとめたことが父の自慢。だが父の事業が傾くにつれ母は別の男と浮気を始める。
やがてフランクが16歳のときに両親が離婚する。どちらの親と暮らすか選べと迫られたことにショックを受けてフランクは家出をする。しかし泊まったホテルで小切手の不渡りを出して追い出されてしまう。そのときパンナム航空のパイロットの羽振りのよさを目の当たりにし、パイロットに化けることを思いつく。
彼は高校の新聞部員のふりをしてパンナム本社を訪れ、パイロットについての細かいことを調べ上げる。またウソの電話をかけてパイロットの制服を仕立てる。おもちゃの飛行機から剥がしたパンナムのシールを貼ったニセの小切手を大量に作成して換金する。フランクは大金持ちになる。
 その後もフランクは医者に化け、弁護士に化ける。どう考えてもばれそうな話だが、実際にうまくいったというから驚き。弁護士の試験にはたった二週間の勉強で実際に合格する。病院で看護婦をしていた検事の娘と結婚するまでになるが、結婚式の当日にFBIが乗り込んできてフランクはマイアミへ逃れる。トム・ハンクス演じるハンラティというぱっとしないFBI捜査官はフランクに何度も出し抜かれ、逃げられる。
 それからも母の生まれたフランスの村でパンナムの精巧な小切手を印刷し、FBIに見つかってアメリカへ護送される。ところがその護送中の飛行機のトイレの中で姿を消す。実際にそんなことが可能なのかどうか分からないのだが、便器のカバーのねじがはずれていて、そこからトイレの下へ潜り込んだらしい。

これは不屈の精神と言うべきなのだろうか。映画の中でフランクの父が小話を披露する。二匹のネズミがクリームに落ちた。一匹目はすぐに諦めて溺れて死んだ。二匹目は諦めずにもがき続け、そのためやがてクリームはバターになり、二匹目のネズミは助かった。自分は二匹目のネズミだと。フランクはこの父親の教えに忠実に生きている。軽薄さと研究熱心さの同居。ズルをして怠けるために払われる膨大な努力。
 FBIのハンラティが言うようにフランクはまだ子供で、大好きだった父と母を失って常に寂しさを抱えている。父とは時々あって自分の晴れ姿を披露し、キャディラックをプレゼントしたりしようとするが、フランクが詐欺師であることは二人とも知っていて、互いを心配しあってぎくしゃくしてしまう。寂しさのあまりクリスマスにフランクがFBIのハンラティに電話をするのも哀しくも笑える。
このずるがしこさと子供っぽさの同居した役柄にディカプリオがぴったりとはまっていてよかった。クリストファー・ウォーケン演じるクセのある父親、突き放すようでいながらフランクを気づかうハンラティ役のトム・ハンクスもいい。

おまけに最後はハッピー・エンド!面白い題材をうまく調理した、とてもよくできた映画だと思う。