女性の欲望の大きさに圧倒されるの巻 〜桐野夏生『OUT』〜

桐野夏生『OUT』読みました。すごく面白かった。一気に読んだ。

あらすじ !!!完全ネタばれ注意!!!
荒涼とした東京の郊外にある弁当工場。そこで働く雅子、ヨシエ、邦子、弥生。それぞれに重い家庭の事情を抱えている彼女たちが、弥生が衝動的に殺した夫の後始末のために協力する。死体を雅子の家の風呂場でバラバラにし、ゴミ置き場に捨てる。
殺された夫が殺される直前に行っていたクラブとカジノのオーナーである佐竹は警察に疑われ、そのためにそれまで築き上げてきたすべてを失う。佐竹は真犯人への復讐を誓う。
邦子の口から彼女たちの秘密を知ったサラ金の十文字と雅子は、死体をバラバラにして捨てるという商売を始める。やがて雅子の周囲にたちこめ始める佐竹の影。邦子の死体。追いつ追われつ。そして佐竹につかまった雅子は、佐竹のサディスティックな部分に呼応し惹かれていく自分を発見する。雅子の反撃にあって死んでいく佐竹。
雅子はそれまでの生活のすべてを捨て、自分だけの自由を探し求める決心をする。

雅子は深爪に近いほど短く切られた自身の指の爪を眺めた。弁当工場の仕事のために、二年間一度も長く伸ばしたことはない。青白い手は、過剰な殺菌消毒のためにすっかり荒れている。信金で二十年間働いてきたこと。子供を産み、家事をして、家族と暮らしてきたこと。あの日々は何だったのだろうか。体に染みついたこれらの痕跡は、紛れもなく雅子自身にほかならなかった。佐竹は虚ろな夢に生き、雅子は現実を隅から隅まで舐めて生きる。雅子は、自分の欲しかった自由は、佐竹の希求していたそれとは少し違っていたことに気が付いた。

住宅地と工場が混在する味気ない東京の郊外での生活の描写が圧巻。日常からどんどんと外へ、OUTへとはみ出していく雅子がサラ金の十文字と組んで働く場面では、読みながらウキウキした。だが、やがて雅子の欲望、彼女の求める自由の飛び抜けた大きさに、凡庸な一読者の私は怖くなってくるのでした。あと、自分がサドでないことがよ〜く分かった。