ドニー・ダーコ 二回目

『ドニー・ダーコ』を再びみました。今度は英語の字幕で。やっぱりよかった。

私の好きなシーン、その1:周りにいる人の胸から『ターミネーター2』の水銀男のようなものがひょろひょろ伸びていくのが突然見えてくてしまうシーン。自分の胸からもその液体のようなものが出てくるのを見て、思わずドニーが笑ってしまうところ。

その2:ハロウィーン前の誰もいない映画館でドニーとグレッチェン(ジェナ・マローン)が恐怖映画を観るシーン。映画の中で物が揺れてぶつかるのに合わせて妙な音が響くが、たぶんあれはドニーだけが聞いている音なのだろう。グレッチェンは映画を観ながら眠ってしまう。その幸せそうな、だが同時に死体を思わせる寝顔。するとグレッチェンの向こうにウサギ(=フランク)が現れる。

ドニー「お前、なんでその変なウサギ・スーツ着てんの?」
ウサギ「お前こそ、なんでその変な人間スーツ着てんの?」
ドニー「脱げよ」

ウサギがウサギ・スーツを脱ぐ。フランクは右目がつぶれ、血が流れている。ドニーが「ゴメン」と謝る。
それからスクリーンの中央に「穴」ができてきて、それが映画の映像を吸い取るようにして干渉する。音楽。
それからドニーはあの自己啓発セミナー(?)の山師(彼もいい味出してる!)の家に火をつけに行く。映画館に帰ってくると、女の子はまだ寝ている。その女の子の寝顔に私は胸がギュンと締めつけられましたよ。


ウサギの声、ウサギが現れる時に流れる音楽、色々な効果音、BGMとして流れるポップスなどをひっくるめて、音の使い方がとてもいい。

ドニーのお母さんもいい。精神科医のところへ夫婦で出かけていて、無理矢理の笑顔で悲しみを表現するところがとてもいい。そのとまどいや悲しみがこちらまでしっかりと伝わってきました。お父さんもとてもいいお父さんだ。怒り狂う女教師の前で笑いそうになるのを咳でごまかしたり。


考えてみれば、中産階級、私立学校という設定は『天才マックスの世界』と同じなのに、どうしてこんなに印象がちがうのか。それはやっぱり、胸を締めつけられるようなやるせなさ、暗闇の中でじっと女の子の寝顔を見つめるときのような感動、おおざっぱに言えば「死の予感」があるかないかではないかと思う。もはや物語の次元をはるかに超えた、体験。それがない映画は、いくら楽しくかっちりと作られていても、自分の中に何も残らないし、そのうちすぐに忘れてしまう。