映画

「物それ自体」の美しさに酔う 〜エレファント〜

ガス・ヴァン・サントの『エレファント』みました。コロンバインの銃乱射事件にインスパイアされた映画。オレゴン州ポートランドの高校の中で、何人かの生徒たちについて順番に、長い廊下や教室や部室やグラウンドを行ったり来たりするのをカメラが延々と追…

カッチャウ!カッチャウ! 〜カーズ〜

ピクサー製作の『カーズ』みました。車だけのアメリカを描いた、とにかく楽しいアニメ映画。!!!ネタばれ注意!!!主人公のライトニング・マックィーンはピストン・カップをあらそう自動車レースの期待の新人。ライバルはベテランの「キング」と性格の悪…

ビバ、ハリウッド! 〜M:i:III〜

『M:i:III』みました。変装、してみたいよね。この映画のトム・クルーズみたいに。チェコ人のバックパッカーとか。バチカンの神父とか。作業員とか。あと、個人的には初老の金持ちの男に化けてみたいね。昭和を思わせるかちっとした暗い色のコートに、首には…

退屈な自殺 〜ラストデイズ〜

ガス・ヴァン・サント監督『ラストデイズ』みました。退屈。「薬物中毒のロック・スターの自殺」と要約される、そのままの、またそれだけの内容。スターの孤独、バンドの人間関係、豪邸の荒れ加減、美男子の金髪白人若者が汚い身なりをして自然の中をうろつ…

「ドラマ」の拒否 〜パラノイドパーク〜

ガス・ヴァン・サント監督『パラノイドパーク』みました。あらすじ(ネタばれ注意)アレックスはスケートボーダーたちが集まるパラノイドパークで知り合った男と夜、列車に飛び乗る遊びをやりにいき、警備員に見つかる。警備員が懐中電灯で殴ってくるのにア…

アメリカ風堕落 〜マグノリア〜

ポ−ル・トーマス・アンダーソン監督の『マグノリア』みました。最初の三分の一はよかった。どんどんと緊張が高まっていくのに比例して、クライマックスへの期待も高まっていく。ところがそのクライマックスはなんだか散発的にやってきて、もうすぐ映画の終わ…

夫の価値が分からない妻 〜ヒストリー・オブ・バイオレンス〜

デイヴィッド・クローネンバーグ『ヒストリー・オブ・バイオレンス』みました。クローネンバーグ監督というから『ヴィデオドローム』や『裸のランチ』や『クラッシュ』や『イグジステンツ』のような、主人公が迷路のような悪夢に迷い込んでいって、変な形の…

石油にまみれたゴッド・ファーザー 〜ゼア・ウィル・ビー・ブラッド〜

ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』をみました。19世紀の終わり、金を求めてたった一人で深い穴の底でつるはしをふるい、硬い岩を掘り進む男の映像から映画は始まる。その穴からはやがて石油が出て、櫓が組まれる。石…

クローバーフィールド

『クローバーフィールド』みました。得体の知れない敵が突然攻撃をしかけてきて、自分たちの住む町が破壊され、仲間たちが死んでいく。軍隊もこの未知の敵にはまったく歯が立たない。こちらは一方的に殺されるばかりで、主人公たちはただただ逃げまどう……そ…

血の池地獄 〜宇宙戦争〜

スピルバーグの『宇宙戦争』みました。とてもよかった。期待してなかっただけ余計によかった。スピルバーグのSFだっていうから『E.T.』みたいな、あるいは『A.I.』みたいなファンタジックなSFを予想してたら、とんでもなかったです。いや、さすがに『E.T.』…

新しさと保守 〜ノーカントリー〜

2007年、コーエン兄弟監督・製作の『ノーカントリー』を観ました。!!!ネタばれ注意!!!麻薬の取引がこじれたあとの現場にたまたま通りかかり、そこから大金の入ったバッグを持ち帰ったモスは、止めときゃあいいのに死にかけている男に水を飲ませてやる…

ドニー・ダーコ 二回目

『ドニー・ダーコ』を再びみました。今度は英語の字幕で。やっぱりよかった。私の好きなシーン、その1:周りにいる人の胸から『ターミネーター2』の水銀男のようなものがひょろひょろ伸びていくのが突然見えてくてしまうシーン。自分の胸からもその液体の…

死相ただよう恋人たち 〜ドニー・ダーコ〜

『ドニー・ダーコ』みました。2001年、リチャード・ケリー監督。本編を観たあと特典映像の中の予告編を見ると、パラレル世界、時間の反転などということが宣伝文句になっていて、そういえばこの映画はSFでもあるのだと思い至った。でも私にとってはSFの部分…

滅びゆく知識人の自画像 〜アワーミュージック〜

2004年製作、ゴダールの『アワーミュージック』みました。ひどい。これは最低の映画です。またネガティブなことを書きます。いや、私も考えましたよ。何もブログにわざわざ気に入らなかった映画のことまで書くことはないのではないかと。実際、そういう立派…

金持ちだって悩む! 〜天才マックスの世界〜

映画『天才マックスの世界』みました。以下、ネガティブな感情の炸裂による悪電波が発生するので注意!苦手。ウェス・アンダーソンは私は苦手。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』もそうだった。カラフルで豊かな町並み。立派な屋敷。きれいな女。白い肌に、…

パンチドランク・ラブ

ポール・トーマス・アンダーソン監督、2002年製作の映画『パンチドランク・ラブ』を観ました。!!!ネタばれ注意!!!ロフトで商売を営む青年実業家バリー。彼にはたくさんの姉がいて、姉たちになにか自分のことを言われるたびに「からかわれている」…

少女たちの「文学と悪」 〜小さな悪の華〜

アンテナにも入っているこの日記で紹介されていた『小さな悪の華』という映画を観ました。映画のさいごで主人公である二人の少女が三つの詩を朗読するんですが、最初に読まれる長い詩はジュール・ラフォルグ(Jules Laforgue, 1860-1887)の『哀れな若者の嘆…

皮肉はやめてベタにしてみました 〜スターシップ・トゥルーパーズ2〜

『スターシップ・トゥルーパーズ2』観ました。舞台はある暗い惑星。昆虫型の宇宙生物との戦いで、人類は劣勢に立たされている。この惑星でも歩兵たちが砂漠の中の砦に追いつめられる。前作(『スターシップ・トゥルーパーズ』)のような明るい青春の場面は…

おちゃめな太っちょ殺人鬼 〜バートン・フィンク〜

コーエン兄弟の『バートン・フィンク』観ました。1991年の映画。フィンクがポカンと口をあけた顔が『バス男』のナポレオン・ダイナマイトにそっくり!ホテルの部屋の壁にかけられた絵につながる最後の浜辺のシーンは、ロブ・グリエの映画やルネ・マグリット…

みんなUFOのせいだってことでいいかな 〜バーバー〜

2001年、コーエン兄弟による映画『バーバー』を観ました。白黒。ベートーベンのピアノソナタとビリー・ボブ・ソーントン演じるエドの無口さが印象的だった。しかし不思議な映画だ。後から考えなおしてみると、いろんな疑問が次から次へとわき出てくるのだ。…

アイロニックな映画 〜スターシップ・トゥルーパーズ〜

今さらですが、『スターシップ・トゥルーパーズ』みました。というか、評判につられてツタヤでDVD借りてみてみたら、これ前にすでにみてました。まあ私的にはよくある話。でもストーリーはほとんど覚えてなかったので楽しめた。前回みたときは「アメリカ万歳…

即断即決!ロボコップよりも逡巡しない男 〜捜索者〜

1956年製作、ジョン・フォード監督の『捜索者』みました。1868年。南北戦争の余塵さめやらぬテキサスで、「アメリカ連合国」の兵隊だったイーサンは弟一家が暮らす家に帰ってくる。ところが罠にはまって家を出ている隙にコマンチに弟一家を殺され、下の娘の…