おちゃめな太っちょ殺人鬼 〜バートン・フィンク〜
コーエン兄弟の『バートン・フィンク』観ました。1991年の映画。
フィンクがポカンと口をあけた顔が『バス男』のナポレオン・ダイナマイトにそっくり!
ホテルの部屋の壁にかけられた絵につながる最後の浜辺のシーンは、ロブ・グリエの映画やルネ・マグリットの絵のようなエレガントなキッチュさ。
また、秘書といきなりいい仲になって、翌朝さっそく彼女がベッドの横で血だらけになって殺されているシーンはショッキングだった。ああいうメチャクチャ強引な巻き込まれ方は嫌いじゃない。
でも、結局フィンクが書いたシナリオも明らかにはならないし、殺人鬼が残していった箱の中身(話の流れからは殺された女性の頭らしいが)も最後まで開けられないまま映画は終わる。謎をたくさん作ったまま(まあたいした謎じゃないけど)放置して終わる、思わせぶりな映画である。これでカンヌ映画祭でパルム・ドールだって。
意地悪な言い方をすれば
- セールスマンの耳垂れと壁紙から垂れてくる糊が似てますが、だから何?
- 作家の小説の題「ネブカドネザル」がたまたま開いた聖書のページにも出てくるけど、だから何?
- 壁の絵の女が最後の砂浜に実物になって出てきますが、だから何?
って感じ。
殺人鬼の男がよかった。とても愛すべき男じゃないか!人の話もよく聞くし!まあ実際にはこんな殺人鬼はありえないし、だからどこかおとぎ話の登場人物のようではあるが。
この映画の中にちりばめられているという他の映画へのオマージュのことはよく分からんが、アメリカの映画評サイトRotten Tomatoesでほめている評はどれも的はずれに思えた。「創作プロセスの秘密を描いてる」って、マジですか。
Top Criticsの中では唯一、この映画をダメとしている評
This creepy satire is full of laughs and flaky twists, but by the end you may still be scratching your head.
(拙訳:この気味の悪い風刺劇は笑いと妙なひねりで一杯だが、あなたは最後になっても訳が分からず頭をかき続けているかもしれない。)
は納得できた。私もまだ頭をかき続けている一人だ。
きっと批評家受けする映画なのだろう。