この映画化はどうよ 〜シャイニング〜
スティーブン・キングの小説『シャイニング』を読んでからそのキューブリックによる映画化をみました。
スティーブン・キングによる小説の方はやっぱりすごい。文庫版では厚い上下二冊本なのに、どんどん引き込まれて一気に読んでしまう。
映画の方は正直がっかり。なにしろ小説での重要なモチーフ、あるいはテーマそのものが省略されているのだ。
以下、ネタばれ注意!
例えば、小説ではホテルの悪意にすっかり取り込まれてしまった父親のジャックは、最後の最後の瞬間に息子の言葉で一瞬我に返り、息子を救うために自殺するのだが、映画ではそんなところまで進みさえしない。屋敷の外の迷路で追っかけっこの末に息子ダニーに追いつけず、ジャックはただ凍死するだけ。
マイアミから助けにやってきて、小説では母と息子を救うのに大きな役割を果たすヒーロー役のハローランは、映画では屋敷に到着するやいなやジャックの斧の一撃で殺されてしまう。飛行機にのって駆けつけるシーンまであるのに、これでは何のために苦労してやってきたのか分からない。
そしてもっとも違和感を覚えたのは、小説では悪霊の巣くうホテルは地下のボイラーの爆発で最後には無に帰すが、映画ではそっくり無傷なまま残り、母と子供はホテルに敗北して惨めに逃げ去っていく点だ。
動物の形に刈り込まれた植え込みが動くシーンや、一番最後にハローランがホテルの悪意に一瞬取り込まれそうになるところなど、うまく使えばとても効果的なシーンになると思うのだけど、それもなかった。
モラル的にも映画はとても後味の悪い終わり方になっている。子供を助けに来たヒーローはさっさと殺され、悪の正体であるところのホテルはのうのうと生き残るのだ。
あと、ジャックが飲む酒もちゃんとマティーニにしとけと言いたい。
誰か
- ハローラン = モーガン・フリーマン
- ダニー = ハーレイ・ジョエル・オスメント
- ジャック = ベン・アフレック
- ウェンディ = グウィネス・パルトロウ
ぐらいの配役で再映画化してくれないかな。(「ぐらいの配役」って……誰が金出すんだか……)