力の関係・古いものと新しいもの 〜受取人不明〜
キム・ギドク監督の受取人不明
７０年代、米軍基地のある田舎の町を
- 混血児チャングク（ヤン・ドングン）
- 女子高校生ウノク（パン・ミンジョン）
- 似顔絵屋の見習いチフム（キム・ヨンミン）
の三人を軸に描く群像ドラマ。
あらすじ（途中まで）
チャングクは母と二人でUS AIE FORCEと前に書かれた真っ赤なバスに住んでいる。父親はアメリカの軍人（黒人）で、すでにアメリカに帰ってしまっている。母はチャングクの父親を探して何度もアメリカに手紙を出すが、いつも受取人不明で返ってくる。
チャングクは犬商人ケヌン（チョ・ジェヒョン）の助手として働いている。ケヌンは残酷なやりかたで犬を殺すことになんのためらいも持たない男。ケヌンはチャングクに犬を殺させようとするが、チャングクはできないでいる。
チャングクの母はときどき周囲の人々に英語で無茶難題を吹っかけて喧嘩になる。そのたびにチャングクが暴れる母をバスまで抱えて帰って殴り、母が号泣する。
女子高校生ウノクは母と兄の三人と住んでいる。父は朝鮮戦争で戦死し、彼らはその年金で暮らしている。ウノクは小さいころ兄が撃ったおもちゃの鉄砲が右目に当り、白く失明している。米軍の病院でなら目を治せると聞き、密かに期待をしている。
似顔絵屋の見習いチフムは元地主の父親と二人で暮らしている。家はすっかり没落し、貧しいためにチムフは学校にも行けず働いている。チムフは気が弱く、いつも学校に通っている二学年下の二人組みの不良にいじめられ、給料日になるとたかられて稼いだ金を巻き上げられてしまう。チムフはウノクに恋心を抱いていて、彼女の部屋を覗き見したりする。かわいがっていた犬を探し出してくれたチムフにウノクはやがて心を開き、夜のビニールハウスで抱き合っているところに不良二人組がやってきてウノクは強姦されてしまう。やがてウノクは妊娠し、母親に連れられて強制的に堕胎させられる……。
チョ・ジェヒョン演じる犬商人ケヌンは最高。ヤン・ドングン演じる混血児もすばらしい。ウノクやチャングクの母もとてもよかった。というか、みんな役にぴったりとはまっていた。ギム・ギドクの作品では監督の意思がすみずみまで行き届いているので安心して映画の世界に浸れてしまう。
チムフとその父の関係にはホロリとさせられた。チムフが不良たちに復習しようと弓矢の練習をしていると、父がさりげなくアドバイスしてやるシーン。それと、チムフが米兵に怪我をさせたときには父が息子の身をかばって「自分がやったんだ」とウソを言う。そこにチムフがやってきて、父親がやっと手に入れて大喜びしていた勲章を刑事に返そうとしていたのを机から取り上げて、再び父の胸につけてあげるシーン。
絵作りについて言うと、枯れ草と刈り取りの終わったあとの田んぼの風景が印象的。。自然の作り出す灰色、褐色などの色合いは寒々しいが、しかし決して暗くはない、むしろ明るい露光。その上に散りばめられる真っ赤なバスや命に満ちた人々の顔が美しい。イギリスや北欧の映画を連想した。
