やっぱヨーロッパがダメ

最近観た映画を二つ。

白いカラス
原題はHuman Stain。フィリップ・ロス原作。
二コール・キッドマンとアンソニー・ホプキンスが良かった。
人種差別、性的虐待、別れた夫のストーカー行為、大学の中の権力争いなどなど盛りだくさん。ちょっといろいろ盛り込みすぎて散漫な印象。

4分間のピアニスト
2006年ドイツ映画。
女子刑務所でピアノを教えている老婆クリューガーと、才能はあるが反抗的な囚人ジェニーとの心の触れあい。ジェニーはクリューガーのレッスンを受けてコンクールを勝ち進む。その途上でジェニーが恋人をかばって無実なのに服役していることや、医者に酷い扱いを受けて赤ん坊を流産したことなどが判明する。一方、クリューガーはレズビアンで、ナチス時代に恋人の女が共産主義者があることがばれて処刑されたことが未だにトラウマになっている。
最後にジェニーはオペラ座にやってきてシューマンのピアノ協奏曲を弾き始めるが、途中でやめて自作の即興曲を弾き始める。演奏のあと、呆然とする観客席からやがて盛大な拍手が……めでたしめでたし。

Arte的なヨーロッパのポリティカル・コレクトネスや教養主義のど真ん中を行く退屈なクズ映画。ナチズムへの批判あり、少数者(レズ)への配慮あり、まったく言うことなし。最後にジェニーが弾く即興は、ジャズ風、変拍子、現代風の、まあどう贔屓目に言っても「何々風」としか形容し様のないロクでもない音楽で、あんなものに比べればシューマンをそのままやった方がはるかにいいのに、オペラ座の着飾った観客たちはそのロクでもない音楽に熱狂的な拍手を送るのだ。まったく笑わせる。

そもそもジェニーは「誰にも頭を下げない」ことを信条にしていたのではなかったのか。オペラ座なんぞに教養を嗅ぎに来るエスタブリッシュメントの連中、自分をこれまで散々痛めつけてきた体制側の賛美を、こんなにも簡単に受け入れてしまっていいのか。まあしかし、「ジャズ風」で「現代風」の即興を喜んでやってしまうようなジェニーにはその程度のユルい反抗が似合っているのだろう。「ブルジョワに回収される瞬間」なんて表現が頭に浮かびましたよ。