ストレートな物語 〜アイ・アム・レジェンド〜

リチャード・マシスンの1954年の小説『アイ・アム・レジェンド 』読みました。

!ネタばれ注意!

謎の病気のために人類がみな死ぬか吸血鬼状態になり、一人だけ残った男が吸血鬼たちと戦う。
文体はとてもストレートで、ほとんど素人っぽく思える部分も多い。フラッシュバックへの導入部なども気づかなくて混乱した。吸血鬼病の科学的説明もまっとうだが面白味に欠けると感じた。あと、主人公が何かというと苛立って物を壊すのが可笑しかった。
1954年というのはマッカージズムがようやく終焉した年である。深読みすればこの小説は共産主義の恐怖を描いているということになるのだろうが、しかしそうだとするとこのラストからは共産主義への共感や同情も読みとれる。主人公は結局納得して死んでいくのだから。
この作品はそれ自体が何度も映画化されているだけでなく、ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(1968年)の元ネタでもあるという。つまりすべてのゾンビ映画の元にあるのがこの作品であるらしい。